- 2014/08/0420:21
ブログを更新し、意気揚々とログインしていたマビノギに戻り、チャットで挨拶を返し記事更新してきたわ! と、記事の内容をご報告した結果、あいらちゃんから「それは求めてた内容じゃない!!」と理不尽なお言葉を頂戴したので僕のリアルの話でもすることにします。もうマビノギのネタなんてないよ、そもそもログインしてないんだから! 決して面白くはないと思うけどこんなバカもいるんだなぁって思ってみてもらえると嬉しいです。
・ハイボールの話。
ハイボール。
成人した皆さんなら一度は聞いたことがあるだろうお酒の名前。
作り方はとても簡単で、ウィスキーに炭酸水を混ぜるだけ。
お好みでレモンやライムを入れても美味しい、爽やかな味のお酒だ。
この作り方をよく覚えていて欲しい―ー。
事は暑い夏の日に起きた。
長い梅雨が明け、東京は照り返す日光のせいもあり熱気に包まれている。
そんな肌を焼くような日差しが降り注いだ日、その夜に僕は腐れ縁(友人とは死んでも呼びたくない。なぜならそいつに俺が「俺たちって友達だよな!」って聞いたら「は?」って言われたから。いや、これは心の中で涙を流したね)と呑みに来ていたのだ。入った店はよく立ち寄るいつものお店。定番の生ビールを注文し、くだらない話をある程度し終えた後のことだ。
友人T(以下T)「おまえ、ハイボール飲む?」
俺「マジ余裕www」
T「おれの前の職場のハイボールはな、焼酎とビールだから」
俺「マジ余裕www余裕すぎクソワ・・・ん?」
お気づきだろうか。
ハイボールとは冒頭で説明したとおり、ウィスキーと炭酸水を混ぜるものである。決して炭酸水(ビール)ではない。そんな飲みかたをした事がない僕としては、そのハイボール(?)はまったく未知のお酒であり、もしかしたら一口飲んだだけでドはまりしてしまう味なのかもしれない、と思った。
ただ、決して異なるお酒を混ぜ合わせる呑み方はよくない。チャンポンとも言われるソレは肝臓に甚大ではないダメージを与えるし、酔いも早くなる。それでも、僕は真に愚かな事に、そのハイボール(?)に魅力を感じてしまっていた。まるで砂漠を彷徨いたどり着いたオアシスのように、極寒の地で手を翳す暖炉のように、一度、飲んでみたいと思ってしまったのだ。
T「焼酎ボトルとビールくださいwwww」
注文。持ってこられたのは黒霧島。居酒屋の定番でもあるモノだ。後にこのボトルが最大の敵になることを僕はまだ知らない。空いたビールのグラスを二つキープし、そこに並々と焼酎を注ぎいれる。透明感のあるクリアなそれは、芋の深い甘みのある香りを放ちながらグラスの半分ほど注がれたところで止められた。そこに、琥珀色のビール。アサヒ、スーパードライ。夏の熱気に蝕まれ火照った体を冷ましてくれたそれを、グラスヘ。照明の輝きが反射し煌きながら注がれていく。
そして出来上がった、一線を越えたハイボール(?)。
琥珀色は薄まり、ぱっと見ただけではその味は想像できない。
俺「ハイボール?wこれ、ハイボール?ww」
T「おうwwハイボールwwマジハイボールww」
俺「ハイブォオオオオゥル!!!wwww」
一口。魅惑のハイボール(?)を口に含み喉に通す。そこに広がるのは焼酎の深みある甘み、そしてコク。それと絡み合うような、スーパードライの辛口で端麗な苦味――ああ、これはまるで。まるで……いや、言葉に出来ない。
僕の頭に浮かんだのは決して桃源郷ではなかった。以前飲んだワンショット5万ほどするウィスキーや、森伊蔵、魔王――それらをエデンのリンゴのように甘美な味とするならば、この酒は泥の水と例えるのもは許されない。汚水だ。濁り、油が浮いた魚も住めない汚水。
当初は琥珀のように見えた輝きも味を知ってしまった今では琥珀なんて思えるわけが無く、茶色の絵の具と黄色の絵の具を混ぜた色を一滴たらしたように思える。世の中にはメシマズ嫁という人がおり、ご近所で鯛飯を食べて美味しかった、海鮮系の出汁を取れば美味しくなるという結論に至り、自宅で買っていた金魚の水槽から水を取りカレーに入れたりする存在である。
今、僕はこの存在と同列に感じていた。
美味しいはずのスーパードライ、そして焼酎を混ぜ合わせ、一つの汚水を作り出してしまったのだ。この行為はメシマズ嫁と同義といっても過言ではない。後悔した。過去の出来事を変えたいと強く思ったが、オッサンである僕の前に白いインキュベーターなど現われやしない。一度行ってしまった事実は変えられないのだ。覆水盆に返らず、とはよく言ったものである。
T「どうしたwww早く呑めよwww」
俺「マジ余裕www」
余裕な訳が無い。
これを飲み干したら僕はマーライオンになる。そんな確信を持っていた。ここは日本の居酒屋でシンガポールではない。マーライオンと化したら好奇の眼で見られるし、なによりも今後この店に来れない。しかし、出されたものは呑むしかない。愚行をした己の罪科なのだ―ー。
太宰治が書いた罪と罰に以下のようなメッセージ性の強いものがある。一つの微細な罪悪は百の善行に償われる。僕は目の前に、まるで醜悪な悪鬼のように胸焼けする香りを放つ酒を目の前にして、それを思い出していた。一つの微細な罪悪(ビールと焼酎を混ぜたこと)は百の善行(飲み干す)ことに償われる、と自己解釈をして。
T「お前飲めないのかよwww雑魚wwwゴクゴクwww」
俺「マジ余裕つってんだろ;;;;;;;;;;」
T「はよ呑めやwwwおれより減ってねえぞwww」
俺「ハイボールうめえ;;;;;;;;;」
一口嚥下するごとに胃をマグナムで打ち抜かれたかのような衝撃が走る。原因はアルコールだ。今までに飲んだことのない味、混ざったアルコールが僕の胃をこれでもかと痛めつけている。次元だ。次元大介が暴れている。彼の名言の中に「鉛が食いたきゃ、そう言いな。お前の胃袋に直接ご馳走してやるからな」というものがあるのだが、本当に直接ぶち込まれている。神経を通して伝わる、ハイボール(?)を受け入れている胃の危険信号が脳を揺らすが―ー既に呑んでいた分のアルコールで麻痺していた僕の脳はそれを隅へ追いやり、呑むことを止めろという信号を出さなかった。
僕はTに煽られた。あいつは言外に、「俺より減ってねぇぞwww(コイツ雑魚ww)」と言っていたのだ。腐れ縁としてもここは負けてはならない、負けてはならない! 今宵の僕の斬鉄剣は一味違うぜ! と己の鼓舞してハイボール(?)を消化していく。
終わりは唐突だった。余裕そうな表情で僕を煽っていたTが席を立ったのだ。行き先はトイレ。もう言わずともがな。この瞬間に僕は勝利者となった。己のプライドを掛けた戦いに勝利し、白黒をつけたのだ。安心しグラスを置いて、勝利の一服を味わう為に自分の煙草に火をつけ、深く煙を吸い込み――ふうと吐き出す。紫煙が立ち込め、感慨に浸る僕はゆっくりと、感情を込めて今はいないTに向けて言葉を吐き出す。
俺「おれたちの世界には……同じ腕の奴は二人いらねえんだ……」
その後の話? するまでもないじゃん。もうお友達がトイレよ。言わせるなよ、恥ずかしい。翌日は二日酔いに悩まされるしマジで災難だった。あんな単純な煽りのってしまった僕が雑魚でした。成人している皆はこれから飲む機会も多くなると思いますが、節度を守って楽しみましょう。機会があれば一度でいいからハイボール(?)飲んでみてね。マジであれ胃に飛んでくマグナム弾だから。未成年の皆はオレンジジュースでも飲んでろ。
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